プロット・アゲンスト・アメリカ

プロット・アゲンスト・アメリカTHE PLOT AGAINST AMERICA

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2020年(第72回)エミー賞ノミネート作品発表!

【リミテッドシリーズ部門】撮影賞

翻訳家・柴田元幸氏による解説はこちら>>

米現代文学の代表的作家フィリップ・ロスの歴史改変小説をHBO(R)がドラマ化! ウィノナ・ライダー、ジョン・タトゥーロ、ゾーイ・カザンなど 映画を中心に第一線で活躍を続ける豪華キャストが集結。

第二次世界大戦下の1940年アメリカ大統領選で、もし反ユダヤ主義で親ヒトラー派の英雄的飛行士チャールズ・リンドバーグが現職のルーズベルトに勝利していたら…という設定のもと、あるユダヤ人家族の視点から変貌を遂げていくアメリカ社会をリアルなタッチで描く。

まさに大統領選を控えた今年、本作に込められたメッセージとは!? あまりにもリアルな歴史フィンクションの独占日本初配信&放送スタート!

イントロダクション

現代アメリカ文学を代表する作家フィリップ・ロスの歴史改変小説をHBO®がドラマ化

代表作『さよならコロンバス』など、キリスト教国に暮らすユダヤ人の苦難や葛藤を真正面からテーマにしてきたアメリカを代表する作家フィリップ・ロス。彼が執筆した「もし第二次世界大戦中の1940年大統領選において、反ユダヤ主義で親ヒトラー派の英雄的飛行士チャールズ・リンドバーグが、現職のルーズベルトに勝利していたら…」という設定のもと、あるユダヤ人家族の視点から急変するアメリカを描いた歴史改変小説『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』(2004年出版)を、『ゲーム・オブ・スローンズ』のHBO®がドラマ化。ロスの最高傑作とも評される名著が、HBO®のマジックでどう映像化されているか、乞うご期待!

ウィノナ・ライダー、ジョン・タトゥーロ、ゾーイ・カザンら豪華キャストが40年代アメリカのユダヤ人の苦悩を熱演!

物語の主人公となるレヴィン家の夫婦を『ルビー・スパークス』のゾーイ・カザンと『ザ・ミスト』のモーガン・スペクターが演じ、ゾーイ・カザン演じるベスの姉で、リンドバーグに傾倒し、レヴィン家にトラブルを巻き起こすエヴリン役を、近年は『ストレンジャー・シングス』で存在感を放つウィノナ・ライダー、ユダヤ教の聖職者でありながらリンドバーグを支持し、彼の政権の参謀となるラビを『バートン・フィンク』『トランスフォーマー』シリーズのジョン・タトゥーロが演じる。また、『マリッジ・ストーリー』のアジー・ロバートソンがレヴィン家の次男フィリップ役で出演。

『THE WIRE /ザ・ワイヤー』『HERO 野望の代償』『DEUCE/ポルノストリート in NY』のクリエイターが再集結! 

オバマ前大統領もお気に入りと公言した傑作ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』のほか、HBO®ドラマ『HERO 野望の代償』、『DEUCE/ポルノストリート in NY』などを製作したデヴィッド・サイモン、エド・バーンズ、ニナ・コストロフ=ノーブルが再びタッグを組み、さらに2018年に亡くなった原作著者フィリップ・ロスも生前サイモンと会い、ドラマ化について賛同し共同製作総指揮としてプロジェクトに参加した。1940年代の設定であるフィクションが、現代社会に投げかけるメッセージとは?

「Rotten Tomatoes」で86%の高評価! 

3月16日に第1話を放送した米国ではレイティングサイト「Rotten Tomatoes」の批評家票で86%を記録!過去に映像化されたフィリップ・ロス作品の中で最高傑作との評価もあがっている。

エピソード

プロット・アゲンスト・アメリカ #6[最終話]

プロット・アゲンスト・アメリカ #6[最終話]

第6話「1942年9月」…ウィンチェルの大統領選への立候補がユダヤ人襲撃に拍車をかけ、全米各地に暴動が広がる。暴動を終息させようと自分が操縦する飛行機で南部に向かった大統領のリンドバーグは、その帰路で突如消息を断ってしまう。さらにその消息を巡って、ある陰謀説がささやかれ始める。

キャスト&スタッフ

監督
  • THOMAS SCHLAMMEトーマス・シュローム
出演
ジャンル ドラマ / 社会派
本編時間 [字]74分
制作 2020年 アメリカ

キャスト&スタッフ

  • “エヴリン・フィンケル,ウィノナ・ライダー”

    エヴリン・フィンケル

    演:ウィノナ・ライダー

    レヴィン家に度々厄介な問題を持ち込むベスの姉。不倫の関係を解消した矢先にラビと出会い、リンドバーグに傾倒、生活が一変する。

    “エヴリン・フィンケル,ウィノナ・ライダー”

    ベス・レヴィン

    演:ゾーイ・カザン

    ハーマンの妻でユダヤ教の習慣を守る敬虔で愛情深い母。政治情勢に逆上する夫や甥をなだめながら、本人も日々変化する状況に不安を隠せない。姉エヴリンも心配の種。

    “ハーマン・レヴィン,モーガン・スペクター”

    ハーマン・レヴィン

    演:モーガン・スペクター

    ニュージャージー州ニューアークで保険外交委員として働き、一家を支えるレヴィン家の主人。政治に関心が強く、ラジオを聴いたりニュース映像を流す劇場に足を運ぶのが日課。

    “ライオネル・ベンゲルズドーフ,ジョン・タトゥーロ”

    ライオネル・ベンゲルズドーフ

    演:ジョン・タトゥーロ

    ユダヤ教の聖職者ラビでありながら反ユダヤ主義のリンドバーグを支持し、レヴィン家では非難の的に。エヴリンに一目惚れし、彼女を自分の職場の要職に就ける。

    “アルヴィン・レヴィン,アンソニー・ボイル”

    アルヴィン・レヴィン

    演:アンソニー・ボイル

    幼くして両親を亡くし、叔父ハーマンの家に引き取られる。反ファシズム思考が強く、親ナチスの大統領誕生に強く反発してある大きな決断をする。

    “フィリップ・レヴィン,アジー・ロバートソン”

    フィリップ・レヴィン

    演:アジー・ロバートソン

    レヴィン家の次男。まだ幼く繊細で、身の回りで起きていることがよく理解できていない。切手収集が趣味。

  • 原作  フィリップ・ロス著「プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…」
    製作総指揮・脚本  デヴィッド・サイモン、エド・バーンズ(『THE WIRE/ザ・ワイヤー』)ほか
    共同製作総指揮  フィリップ・ロス
    監督  ミンキー・スピロ(『ダウントン・アビー』)、トーマス・シュラム(『ジ・アメリカンズ』)

解説

【翻訳家・柴田元幸氏 解説全文】

フィリップ・ロスと『プロット・アゲンスト・アメリカ』について

 2004年にフィリップ・ロスの『プロット・アゲンスト・アメリカ』を刊行後まもなく読んだとき、これはジョージ・W・ブッシュ政権への怒りが背後にあると思った。描かれているのはあくまで1940年代前半、もしもチャールズ・リンドバーグが大統領選に立候補して勝利を収めたら、という仮定に基づくフィクションであり、迫害される人々はひとまずユダヤ系アメリカ人に限定されるが、民族や宗教の違いゆえに人の権利と自由が奪われていくという流れは、9/11以降のブッシュ政権下のアメリカで起きていることにほとんどそのまま重なるように思えたのである。

 2020年のいま、これが本当に一国の大統領のやることだろうか、と改めて驚くことも忘れてしまうほど頻繁に信じがたい言動を現大統領がくり返すなか、ジョージ・ブッシュが当時どれだけ邪悪に思えたかを思い出すのも難しくなってしまったが、「愛国者法」で個人の自由を制限し、特定の国を「悪の枢軸」と呼んで世界を単純に白黒に塗り分ける姿勢は、アメリカの理想を踏みにじる暴挙に感じられたのだ。

 1959年に『さようなら コロンバス』でデビューして以来、『プロット・アゲンスト・アメリカ』以前に20冊の作品を発表していたフィリップ・ロスは、それまでにもたびたび、アメリカでのユダヤ人差別に触れてはいた。特に、ひとまずノンフィクションと称した2冊『事実』(1988、未訳)と『父の遺産』(1991、集英社文庫)では、自分が子供のころ受けた暴力や、長年保険外交員を務めた父が会社で受けた不当な扱いについて書いている。また以前には、ニクソン政権を徹底的にからかった爆笑小説『われらのギャング』(1971)もあって、政治の世界にロスが踏み込んだのもこれが初めてではない。

 だが、差別、迫害、不寛容といったテーマにこれほど正面から向きあい、社会の政治的側面を取り上げたのは、長い作家生活のなかでもおそらく『プロット』が初めてだった。それで、「そうか、さすがのロスも、政治について黙っていられなくなったか」と僕は早合点したわけだが、これは僕だけではなかったと思う。『プロット』で現代を描いたつもりはない、あくまで1940年代の仮想世界を描いただけだ、と作家本人は述べたが、小説は時に、作者の意図を超えて現実と反響しあう。『プロット』を読んでいる最中に、2000年代のアメリカを包んでいた非寛容の空気に思いをはせなかった読者はまずいないだろう。

 2017年にドナルド・トランプが大統領に就任し、「アメリカ・ファースト」を打ち出すなか、『プロット・アゲンスト・アメリカ』はふたたび現実と反響しあうことになる。そもそも「アメリカ・ファースト」はリンドバーグにとっても鍵となる言葉だったし(小説でも現実でも、リンドバーグの活動基盤はThe America First Committee〔アメリカ優先委員会〕だった)、マイノリティを敵視し「アメリカ」が白人の所有物だという前提に立つところも共通している。「ユダヤ人」を「移民」と置き換えれば、『プロット』で起きていることと今日のアメリカで起きていることとの類似は明らかだった。アメリカでは多くの人々が――そして日本でも何人かが――「トランプを予見したような小説」と『プロット』を思い起こした。

 ロス自身は、亡くなる一年ちょっと前、eメールでのインタビューで、リンドバーグとトランプの相違に触れて、リンドバーグは曲がりなりにも空の英雄であり勇気も技術もあり人格と実体があったがトランプはただの詐欺師だと述べている。だが「ただの詐欺師」に世界を動かす権力が与えられていて、詐欺師がその権力を非人間的な形で行使していることは事実である。HBO®で『プロット・アゲンスト・アメリカ』をドラマ化した当事者たちも、またいち早く書かれた欧米の劇評の評者たちも、みな一様に、『プロット』がその現在進行中の事実に警鐘を鳴らす作品であることを強調している。ある作品が何かの事実に警鐘を鳴らしていることは、原理的にはその作品の芸術的価値とほとんど無関係だと思うが、今回ばかりは例外かもしれない。

 小説『プロット・アゲンスト・アメリカ』が見事なのは、架空の政治的展開を説得力豊かに描きつつも、焦点はあくまで、その政治によって、名もない市民たちが被る変化に当てられていることである。読者は歴史の勉強をするより前に、フィリップ少年の不安を、フィリップの父の怒りを、母の葛藤を通して、迫害される個人と家族の生を自ら生きる。今回のドラマ化は、そうした原作の美徳を、各俳優の絶妙の演技もあって、もしかしたら原作以上にくっきり浮かび上がらせている。複雑なストーリーを安易にわかりやすくすることもなく、結末などはむしろ原作以上に曖昧になっているが、だからといってモヤモヤした終わりという印象がまったくないのは、無名の人々に寄せる、祈りにも似た共感が物語の底に流れているからにちがいない。

※本内容は、柴田元幸氏の見解です。

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