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“ジョン・レノン俳優”イアン・ハートがリヴァプール愛を語るインタビューコメント到着/『レスポンダー 夜に堕ちた警官』 original image 16x9

“ジョン・レノン俳優”イアン・ハートがリヴァプール愛を語るインタビューコメント到着/『レスポンダー 夜に堕ちた警官』

解説記事

2022.08.31

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『レスポンダー 夜に堕ちた警官』において麻薬売人カールを演じるイアン・ハートのインタビューテキストが到着!あわせて本作の舞台であり、ハートほか地元出身俳優が多数出演するリヴァプールと関係の深い本作にちなみリヴァプール出身の俳優たちを紹介いたします。

目次

意外と知らない?リヴァプール出身の俳優たち

イングランド地方の北西部に位置するリヴァプールは、18世紀頃から貿易港として栄えた下町の雰囲気を残す海洋都市であり、労働者の街でもある。世紀を代表するロックバンドであるザ・ビートルズを始め、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、エルヴィス・コステロと世界に誇る伝説的ミュージシャンを生み出してきたリヴァプールだが、彼の地にゆかりのある映画人にはどんな人がいるのだろうか?

 まずは、『僕たちの時間』(91)でスクリーンデビューを果たし、ザ・ビートルズの初期を描く『バック・ビート』(94)と二作連続でジョン・レノンを演じた後、『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)ではクィレル先生を演じたことで世界的に知られるイアン・ハートはご当地リヴァプール出身だ。

 続いて、『レスポンダー 夜に堕ちた警官』に出演、かつエピソード監督も務めるフィリップ・バランティーニ監督作の 『ボイリング・ポイント/沸騰』(現在公開中)で主演を務めるスティーヴン・グレアム。リヴァプール郊外出身のスティーヴンは、ガイ・リッチー監督の『スナッチ』(00)でブレイク後、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(11)などハリウッドでも活躍する。

 さらに、『エイリアン3』(92)やテレビ映画『ドクター・フー』(96)で8代目ドクターを務めたことでも知られるポール・マッギャンや、『刑事モース~オックスフォード事件簿~』(12~21)の主演エンデバー・モース役の他『原潜ヴィジル 水面下の陰謀』(21)など英国ドラマ界での躍進を続けるショーン・エヴァンスもリヴァプールで生まれ育った俳優である。

 その他意外な存在として、大ヒットシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』(98~04)のサマンサ役で知られるキム・キャトラルも実はリヴァプール出身だ。リヴァプールで生まれ、子どもの頃にはカナダのバンクーバーに家族と移住したキムだが、2010年にはリヴァプールのジョン・ムーア大学で名誉学位を授与されており、自身のルーツがリヴァプールであることに誇りを持っているという。
レスポンダー 夜に堕ちた警官

レスポンダー 夜に堕ちた警官

イアン・ハート インタビュー全文

Q:『レスポンダー 夜に堕ちた警官』について教えてください。
A:『レスポンダー 夜に堕ちた警官』は問題を抱えた人々、それらを乗り越えようとする人々、精神的、肉体的な問題を抱えている人々が混ざり合う姿を描いたドラマです。ドラマを通じてカール、マーコ、ケイシーのようなリアルな人間の姿を見ることになります。

ケイシーを例にとってみましょう。彼女は切迫した恐ろしい状況の中にいるのに惨めには見えません。彼女の転落、不幸、貧困、そして路上生活をおくるホームレスになった姿を見ていても、それほど悲惨には思えないのです。そう、悲惨な状況の一方で、そんな彼女がパイを買いに行き、店員の女性とカウンター越しに自らのみじめな人生の話など一切しないからです。会話の中に自分の窮状を差し込んだりしない。たとえ、毎日顔を合わせるような人が自分からドラッグを盗んだとしても、その人の良い面を見ようとするのが人間のリアルさなのです。
レスポンダー 夜に堕ちた警官

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Q:このドラマに出演しようと思った理由を教えてください。
A:ページをめくる手が止まらなくなるほど素晴らしい脚本だったからです。全く知らない作家が書いた面白い小説のようで、ページをめくるたびに、その先が知りたくなる感じでした。すべてのキャラクターにちゃんと個性があるのです。トニーの脚本は笑いあり、悲しみもあり、どんな展開になっていくのか見逃せない気持ちにさせる魅力がありました。

トニーの作風は独特で、単純ではないのにキャラクターたちの個性をたちどころに読み手が理解できてしまう。そして彼らの振る舞いや抱えている闇の深さに関わらず、たちどころにすべてのキャラクターに魅了されるのです。彼らが人間として非常に魅力的だということは、つまり非常にリアルに描かれているからなのです。これは警官と泥棒のドラマではないし、善人と悪人を色分けするようなストーリーでもありません。そこにあるのはただ自分の人生を生き抜いていこうとする人々の姿だけなのです。

脚本はいわば出発点です。そしてトニーの脚本にはすべてが描かれていました。私は彼らがどんな道を歩むことになるのか知っておきたかった。なぜかといえば、ここに出てくる登場人物たちは犯罪ドラマに出てくるありきたりなキャラクターたちではなかったですし、私の演じたカールも典型的な犯罪者役とは違っていたのですが、脚本を読むことでキャラクターたちの人物像をすぐに思い描くこともできました。彼らには様々な面があり、誰もが生身の人間のように描かれていました。リアリティのある人間を演じるのは難しくはありません。実際、カールは最も演じるのが簡単な役のひとりでした。というのも固定概念を捨てて、脚本に描かれたものだけを演じれば良かったのですから。このドラマに参加することができて本当に光栄でした。
Q:カールというキャラクターと物語の中での役回りについて教えてください。
A:カールはしがない麻薬売人としてどうにか生きているような男です。麻薬カルテルのボスのような大物ではありません。ただ麻薬や誰かの親戚とやらが持っていた怪しげな車なんかを売買しているたぐいの輩なのです。周りには小さい頃や大学時代からの知り合いがいて、今はそれぞれの人生を歩んでいる、といった世界中のどこにでもあるようなありふれた環境の中で生きています。カールとクリスも、ひとりは警官になり、もうひとりは明らかに違います。でも、だから友情も終わったというわけではありません。奇妙ではあるものの、ふたりは腐れ縁の友人です。そんなふたりの倫理的な関係性を描く物語を作ることもできたかもしれません。しかし、トニーの脚本は違うのです。彼が描いているのは、人生のピンチをただ乗り切ろうとしているふたりの男の姿なのです。
Q:ケイシーとカールの関係について教えてください。
A:ケイシーはこの脚本の中で最も魅力のあるキャラクターのひとりです。ケイシー役のエミリー(・フェアン)との共演は今回が初めてでしたが、本当に優れた才能の持ち主ですし、彼女の人柄にすっかり惚れ込んでしまいました。ケイシーは偶然にも大量の麻薬の入ったバッグを手に入れてしまう。それなりの人物にしか捌けない量のコカインとその金額の大きさに判断力を失う彼女の前に、その持ち主であるカールが現れるのです。もちろんカール自身も別の誰かに借金をしているのは言うまでもありません。カールはクリスに対して、これも警察の職務だと言わんばかりに強引に汚れ仕事をやらせ、ケイシーを自分のもとへ連れてこさせようとします。もし無事に麻薬が戻ってくればカールは借金を返し、殺されることもなく、すべてが丸く収まるはずでした。しかしケイシーはそんなカールの目論見に反した行動をとり、事態は予想外の展開へと発展していくのです。
レスポンダー 夜に堕ちた警官

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Q:どのような役作りをしましたか?
A:カールはそこまで明るくもない男と思いますが、そもそも麻薬売人ですからそんな心の余裕はないのでしょう。いつ捕まるか、いつ殺されるか、自分の麻薬を盗まれるかと気を揉みながら毎日を過ごすプレッシャーを想像してみてください。相当な心理的な負担を感じながらもカールはビジネスを続けているのです。彼はビジネスマンなのです。確かに売買しているものは違法ですが、彼のしていることは他のビジネスと大きな差はないのです。
Q:カールと売人仲間のイアンとバリーの関係について教えてください。
A:彼らはそれぞれに自分よりも少し下にいる奴らがいると考えていますが、それはエゴでしかないのです。カールには自分より上の人物がいて、その人物の上にもほかの誰かがいるのです。どんな人間関係にも上下がつきものですし、カールはイアンとバリーは間抜け者だと思っているのです。みんな生きるためには稼がなくてはなりません。

彼らだって自分の仕事をして稼ぎを得ています。たとえ自分の仕事とボスに幻滅しながらも月曜日の朝になれば仕事へと向かうのです。それが彼らの生き方なのです。ふたりはおそらくカールのことを無能の役立たずだと思っているでしょうし、カール自身もすべてを失ってもなお、月曜日には仕事に姿を現すのです。そして何をする? 車でも盗むか? いいね、じゃあ盗みにでも行くか、となるのです。

これは仕事の環境が違うだけで、どんな職業にも置き換えることができると思います。それに何かが違っていたらケイシーだってトップショップ〔スターチャンネル注※:イギリスのファスト・ファッションブランド〕のマネージャーになれていたかも知れないのです。
Q:クリスとカールは友人同士なのですか?
A:ふたりは昔からの友人なのでしょう。私自身は学生時代の仲間の多くが今どうしているのかわかりませんが、おそらく様々な道へと進んでいると思います。クリスとカールも同じです。余計な詮索や質問さえしなければ、友人たちがどんな仕事をしているのかわからないものです。トニーはふたりがそれぞれの職業で相手を決めつけるようなことはしない間柄として描いています。相反するような立場にあっても友人関係は続けられるというのは現実でも信ぴょう性があります。トニーはそこを巧みに突いているのです。

警官であってもやはり人間ですから、彼らも自分たちが目撃したものややったことに、情緒面でも心理的にもネガティブなインパクトを受けるはずです。警察学校へ入って16週間の訓練を受けさえすれば、残りの人生はずっと苦悩や痛みから確実に解放される、などということは有り得ません。人生でそんなことは起こらないのです。

カールはクリスの精神状態など気にしません。クリスの気持ちを考えたり、同情などしないのです。ただクリスがまた怒っているな、としか思いません。彼にとってはもっと大事なことがあるからです。ついていない日にカールは、「ビールを飲むか、仲間とつるむ」と言うのですが、おそらくこれは誰もが理解できることだと思います。というのも、自分の行いをいつまでも長く引きずることなどあまりないからです。

しかしクリスの場合は自分の行いをいつまでも長く引きずっているのです。クリスには家庭問題、仕事のトラブルが重くのしかかっている一方でカールはそれらを避けて生きているのです。
レスポンダー 夜に堕ちた警官

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Q:マーティン・フリーマンのスカウス(リヴァプール訛り)はどうでしたか?
A:まったくお見事の一言ですね!彼はこれまでにアメリカ人もスコットランド人も演じていますから、不思議なことはありません。難しいと思いがちですが、例えば台湾語を今から習い始めても、それほど難しくはないものです。歌を歌うなら、メロディと音の高さを覚えなければならないようなものなのです。
Q:監督のティム・ミーランツとはいかがでしたか?
A:以前にもティムとは仕事をしていたから、彼のやり方は知っていました。非常に彼らしいユニークなスタイルは素晴らしいと思っています。非常に愉快で、今までに観たことのない、あるいはあまり観たことのないような手法で視聴者を惹きつけることを考える人物です。アイデアも豊富で他の監督のスタイルは決して踏襲しません。
Q:リヴァプールでの撮影はいかがでしたか?またそれがこのドラマにどのような意味があると思いますか?
A:リヴァプールは面白い街です。もう長い間、リヴァプールには住んでいませんし、ロンドンで暮らしている期間のほうが長くなりました。私がいなくなってから随分と様変わりしましたし、コロナ禍での撮影はとても大変でした。というのもコロナ以前のリヴァプールの街と同じ雰囲気ではなかったからです。リヴァプールにはあそこならではの趣きがあります。このドラマは他の場所を舞台にすることもできると思いますが、リヴァプールの独特な雰囲気なしには、同じものは作れないでしょうね。
Q:リヴァプールらしさはセリフや訛りにどう反映されているのでしょう?
A:トニーは聞いたことのない、まるで外国語のようにすら聞こえるセリフを書きます。リヴァプール訛りには独自のリズムと汚い言葉を多用した言葉の使い方があるのです。文章の中に罵り言葉を置くことで、その文章全体の意味合いが変わります。仮に誰かが気分を害するかもしれないという理由でセリフからその罵り言葉を外してしまうと、セリフ全体の意味も、視聴者への意図も変わってしまうのです。

トニーは独特のリズミカルな調子で脚本のセリフすべてを生き生きとしたものにしています。他にはない慣用的な表現を使っているのですが、それらを理解できないとストーリーの面白さは半減かもしれません。“バッグヘッド(baghead)”はヘロイン中毒者という意味ですが、おそらく翻訳されていないか、まだ知られていないでしょう。だからといって「ヘロイン中毒」と書いてしまうと実用的な単語を使った単なる描写のようになってしまう。こうした考察の積み重ねがこの脚本を単なる警察ドラマではないユニークなものにしているのです。
Q:劇中でクリスのセラピーの描写をすることの重要性を教えてください。
A:警察官にはセラピーが必要です。なぜなら彼らは時に恐ろしい職務をこなしているからです。要請を受けて、時には扉を蹴破って家に入り、死体を発見したり、悲惨な自動車事故現場に直行したり、遺体や殺人現場に立ち会うこともあるでしょう。自ら酷い現場に身を置いたり、常に強い存在であることを求められたりと現実離れした職業なのです。それらが彼らの心の健康に影響を及ぼすのは当然の結果で、だからこそケアが必要なのです。その心の傷にきちんと向き合わないと、いつかトラウマを抱えることになってしまいます。
Q:このドラマは海外でどのように受け止められると思いますか?
A:先入観のない分、イギリス以外の国々でも受け入れられると思います。それにトニーはこのドラマのキャラクターたちの姿や彼らの生きている現実を、気の毒な人たちの物語として描いているわけではありません。海外の視聴者はリヴァプールについて先入観がないという点から、より一層このストーリーをオープンに受け入れてくれることでしょう。
レスポンダー 夜に堕ちた警官

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『レスポンダー 夜に堕ちた警官』
原題:THE RESPONDER
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Rekha Garton© 2021 Dancing Ledge Productions
©2021 Dancing Ledge Productions, Photographer Rekha Garton.
© Dancing Ledge Productions Ltd MMXXII
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