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アニー・シモンズ(衣装デザイナー)&アレクサ・チャン対談|インタビュー公開『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』 original image 16x9

アニー・シモンズ(衣装デザイナー)&アレクサ・チャン対談|インタビュー公開『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』

インタビュー

2024.11.11

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『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』の衣装を担当したエミー賞、BAFTA賞受賞者のアニー・シモンズ(『キング・アーサー』、『僕の巡査』)とファッションアイコンでありTVのプレゼンターとしても活躍するアレクサ・チャンがジャコビアン時代のファッションについて、本作の制作の裏側について語ります。

アレクサ: 『メアリー&ジョージ』の舞台であるジャコビアン時代のファッションについてお聞かせください。どのようにリサーチしましたか?
アニー: 私だけでなく多くの衣装デザイナーはまず絵画を研究します。1840年以前は写真がありませから。この時代、宮廷画は非常に様式化されていました。そこから得られるのは、非常に抽象的な線と美の感覚で、実はデザインにとても役立ちます。なぜなら衣装デザインをする際、常にその時代のキーポイントを見つけようとするからです。ジャコビアン時代のシルエットは非常に魅力的で最高だと思いますが、あまり映画やドラマでは見ることができないのではないでしょうか。エリザベス朝やテューダー朝が多いのです。
アレクサ: ジャコビアン時代のシルエットはどのようなものですか?
アニー: 非常にスリムな胴体、「スラッシュ」と呼ばれる切り込み装飾、長くゆったりとしたブリーチ(ズボン)。そしてリボン。スラッシュは非常に流行っていて、重ね着ができる余裕があることを示しています。そして、襟やカフスにはレースが使われていました。レースは最も高価なものの一つだったので、レースが多いほど裕福であることを示します。すべては富と見栄です。多くの家族は、宮廷の一員になるために、衣装に莫大な金額を費やし、破産したといいます。豪華な衣装で「理想の自分」を演じていたんです。
アレクサ: どんなトレンドがありましたか?
アニー: 手袋は重要なアイテムでした。そして、カフス、ラフ(ひだ襟)。そしてフォーリングラフ(衣服の首周りに取り付けられ垂れ下がる形のラフ)が登場しました。1620年代はファションの過渡期だと思います。テレビドラマであまり見られないのは、ジャコビアン朝はエリザベス朝ほど人気がないからです。イギリス人はエリザベス1世が大好きですからね。ジャコビアン時代は不安定で、やや暗いんです。しかし、知的な時代です。そしてシルエットは柔らかくなっていきました。エリザベス朝の男性は、男性服の最も滑稽なもののひとつにであるコッドピース(14世紀から16世紀にかけてヨーロッパで流行した男性の服装の一種で、股間に装着し誇張するアイテム)のように極端な男性らしさを好みました。自分がいかに男らしいか過剰にアピールしたんです。しかし、ジャコビアン朝にはそれは消え、よりソフトに、長く、少年っぽい服になりました。おそらく、ジェームズ1世が若い男性を好んだからではないでしょうか。
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』
アレクサ: 生地が美しいですね。どこから仕入れて、どのように裁断されたのでしょうか?
アニー: 多くは織物でした。イタリアやフランスのシルクがありました。イギリスではベルベットが作られていました。ジャコビアン時代にはネックラインが下がり、ウエストラインが短く太くなっています。問題は、女性が画面上で妊娠しているように見えることでした。
アレクサ: エンパイアラインになる?
アニー: そうなんです。ウエストの位置が高くなるので、胸の下から何か飛び出しているように見え、少し違和感があります。私たちは、男性のラインに沿った、より長いウエストラインにすることにしました。メアリーの衣装は一貫したシルエットにすることを目指しました。
アレクサ: 女性は胸元を強調するシルエットですよね。スカートは常に長かったのでしょうか?
アニー: すべてが常にフルレングスでした。テューダー朝のネックラインはややアーチ型で、エリザベス朝はフラットでした。この時点で、ネックラインは低くなり、丸みを帯び、最終的に17世紀後半には完全にオフショルダーになり、すべてが柔らかく緩やかになります。それは一種の漸進的変貌でした。
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』衣装
アレクサ: 王様よりも派手な服装は許されなかったですよね。宮廷では袖の金装飾を王よりも多く装着することはできなかったのでしょうか?
アニー: いいえ。ジャコビアン時代には、中産階級と商人階級はますます裕福になり、服で富を表したいと考えました。そのため、多くの時代と同様に、奢侈禁止令が導入されました。例えば、金色や紫色を身に着けることはできませんでした。紫は王室の色です。服装で自分の階級や地位を定義しなければなりませんでした。
ジェームズ王はストライプが好きだったそうです。そのため、彼に見初められたい若い男性たちは、ストライプの服を着るようになりました。
アレクサ: メアリーの衣装はとても印象的で、際立っていますね。どのように作り上げていきましたか?
アニー: ジュリアン(・ムーア)と会い、彼女の体型やラインに合わせて形を調整しました。オリヴァー(・ハーマナス監督)は、彼女が常に同じシルエットを維持することを望んでいました。そこで、ストーリーのセクションが変わるたびに色を変えることを提案しました。地味なグレーからカラフルな衣装への力強い変化です。物語の始まりでは、彼女は厳しい状況に陥っています。高級な布ではあるけれど、汚れていて地味で、私は「カビ臭いチーズ、古いパン、焦げた骨、凝固した血」と表現しました。それがパレットでした。そして物語が進むにつれ彼女の衣装は洗練され、第3話、彼女は宮廷でとんでもなく間違った装いをします。絶対タブーな紫色で、エリザベス朝スタイルの時代遅れなドレスで現れるんです。
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』
アレクサ: しかし、彼女は注目を集めるためにわざとそうしたんですよね。
アニー: そうなんです。彼女の行動はすべて計算されたものです。あのシーンでは、彼女は奢侈禁止令のすべての規則を破っています。
アレクサ: メアリーは人を操る、狡猾な女性ですね。
アニー: 確かにそうです。しかし彼女は非常に政治的で賢い女性でした。操縦的で狡猾ですが、非常に自信に満ちていて賢明です。彼女は当時の多くの女性と違って読み書きができました。とても賢い人でした。
アレクサ: かなり大きな衣装チームだったのではないでしょうか?
アレクサ: はい、巨大です。ピーク時にはセットに120人、ワークルームに90人がいました。
アレクサ: チームにはどのような専門家がいるのですか?
アニー: パターンカッターがいて、彼らはチームを運営し、フィッティングを行い、縫製もします。ラフメーカーとそのチームがいて、ラフの歴史的な研究を行い、超高速の技術を開発して、ラフを大量生産しました。そして、素材に古びた加工を加えるディストレッシングチームがいます。この時代の多くの人々は汚れていて、ほとんど洗濯しませんでした。特にジェームズ1世は洗濯が嫌いだったので、私たちは彼をできるだけ汚れて見せるようにしています。
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』
アレクサ: ジョージをセクシーに見せるためにどのようなことをしましたか?触感的な生地を使ったのでしょうか?
アニー: 元々予定していた色があったのですが、ニック(ニコラス・ガリツィン)の肌や目の色とはあわないと思いました。それぞれ合う色と合わない色がありますから。私たちは彼を不機嫌そうにダークなものにしました。ニックはとてもセクシーです。面と向かっては言いませんけどね(笑)
アレクサ: みんながニックの後ろで「すごい素敵…」とひそひそ言っていることを彼は知りませんよね(笑)
アレクサ: ジョージは素晴らしい体格を持っていて、それを強調しているだけです。隠そうとはしていません。彼は、母親が彼に自分のアイデンティティと服装を教えてくれるまでは、自分自身を知らない少年でした。そして、彼の完全な体格を見ることができます。男性キャストの多くは、ズボンの形、ブリーチの奇妙さに苦労していましたね。私みたいな80年代のニューロマンティックを知る世代以外にとっては未知のものだったようです(笑)
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』衣装 ニコラス・ガリツィン
アレクサ: ジョージ・ヴィリアーズがどんなルックスだったのか調べ、黒の革のジャケットに真珠をつけた肖像画を見ました。
アニー: 真珠は波を征服することに関係しています。ドラマにも登場するウォルター・ローリー卿は、真珠で覆われたマントを着ていたことで有名です。真珠は彼らの海の強さの象徴であり、また光を発するものでもありました。アン王女のお気に入りでもあったようです。
アレクサ: イヤリングはどうですか?
アニー: 女性は時々複数のピアスをしていて、興味深いことに、真珠や小さな結んだ絹の糸が穴に通されていました。とても奇妙でした。
アレクサ: つまり、当時のイヤリングは金属のループではなく、紐だったのですか?
アニー: 両方ありましたが、常にピアスでした。ネジ式のものはなかったです。男性の場合は片耳イヤリングでした。ジェームズ1世は、宝石を政治的なステートメントとして身に着けていました。
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』衣装
アレクサ: ジャコビアン時代の服装で最も驚いたことは何ですか?
アニー: やはり先程お話したフォーリングラフ(襞襟・ひだえり)です。広くて硬いラフから、垂れ下がったラフと奇妙な変化をし、その後、巨大なレースの襟へと発展しました。すべてはテューダー朝の小さなフリルから始まり、人々がより贅沢になるにつれてフリルは大きくなり、そして垂れ下がり始めたのです。興味深いですよね。

(了)
『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』衣装

BTS: A Look Inside Mary & George’s Costume Design | STARZ

via YouTube
メアリー&ジョージ 王の暗殺者
​ドラマ公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/maryandgeorge/1/

▼放送
<字幕版>毎週火曜よる11:00 ほか
<吹替版>毎週木曜よる11:00 ほか

▼配信
<字幕・吹替版>全話独占配信中!
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0D9D52MV7/


<ストーリー>
17世紀、エリザベス1世から王位を継承したジェームズ1世が統治するジャコビアン時代イングランド。地主階級ながら野心的なメアリー・ヴィリアーズは、暴力的な夫や質素な暮らしに嫌気がさし、容姿端麗の次男ジョージをフランスに送って、裕福な女性と結婚する社交術を習得させようとする。しかし国王ジェームズ1世が若い男性に目がないことを知ると、息子を国王の愛人にし、権力と富を手に入れるという大胆な計画を企てる。フランスから帰国したジョージは、母の導きのもとに数々のライバルを蹴落とし、ジェームズ1世の寵愛と信頼を得て、「バッキンガム公爵」として王政を司る枢密院メンバーにまで上り詰める。一方、自らも上流貴族と再婚したメアリーは、陰謀や策略を張り巡らし、ジョージと共に富と権力と称号を手に入れる。ヴィリアーズ家は宮廷で最も影響力のある一家に成り上がっていくが、政治家のフランシス・ベーコンら政敵との権力争いや敵国スペインとの確執など、彼らの成功を阻む問題が浮上するなか、次第にメアリーとジョージが対立し…。

ハッシュタグ: #メアリージョージ #ジュリアンムーア #ニコラスガリツィン #ジャコビアン朝 #襞襟 #衣装デザイン #ファッション #アレクサチャン

『メアリー&ジョージ 王の暗殺者』© Sky Studios Limited 2024
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