ロビー・テイラー・ハント（インティマシー・コーディネーター ）|インタビュー公開『メアリー＆ジョージ　王の暗殺者』

インティマシー・コーディネーターとは、作品の親密な部分のファシリテーション（進行）と振付をする人です。“インティマシ―”の領域は非常に広く、主に擬似セックス、ヌード、キス、身体機能、出産、医療シーンなどですが、それに収まりません。
重要なのは、親密なシーンとは何か、実際どのようなものになるか、全員が理解し、確信できることであり、そのための事前の対話のために私が存在します。これにより、誰もが現場で起こることを正確に把握できます。
俳優の境界線（バウンダリー）を守ること、シーンやキャラクター、ストーリーのために望ましいことをクリエイティブに実現することを私は提唱しています。

事前にたくさん話し合っておきます。撮影当日を迎えるときには、すでにすべてが固まっています。
私はまず台本を見て、親密になるシーンがあるか確認し、監督がそのシーンで何をイメージしているのか、どのように撮影するつもりなのか、そしてそのシーンから何を表現したいのか、理解にズレがなくなるまで話し合います。
それから俳優にその内容を伝えるんです。
そうすると俳優側から「うーん、ちょっと心配なことがあるんだけど」とか、「ここについて質問があるんだけど」という反応があるので、それを受けて、俳優陣と監督とが演技内容に関して明確に同意できるよう、対話を促します。

ジャコビアン時代を舞台にしたドラマのインティマシーは、明らかに一筋縄では行きません。
現代作品とは衣装が大きく異なります。服を何枚も重ね着している状況での脱衣シーンや擬似セックスシーンでは、素晴らしいコスチューム・チームと入念に連絡を取り合い、すべてが正しく行われていることを確認しなければなりません。
本番で思わぬ問題が起きないように、また、ちゃんとリアルに見えるよう、入念な打ち合わせが必要です。

台本に「下着姿で」と書かれているものは、現代の台本であれば「ああ、これはかなり露出しているな」と思うのが普通です。しかし、ジャコビアン時代の設定では、彼らはジャコビアン時代の下着を身に着けています。そういうことについて知っておく必要があります。

ジャコビアン時代の親密さを撮影する際のもう一つのポイントは、それが異なる社会文化的背景、異なる社会だということです。セックスやジェンダーをめぐる考え方が今とは異なるのです。どのように撮影するか、登場人物がセックスやセクシュアリティの瞬間にどう関わるかも考慮しなければならない。制作者がこのジャコビアン時代をどう道案内するか、でもあります。

第3話でスコットランド人の“寝室の紳士たち”４人がジョージの服を脱がせ、陰毛を1本抜くというシーンがありました。このような非合意的な行為は、明らかにセンシティブです。無理矢理に裸にするという行為がどこまで行われるのかという話し合いをしなければなりませんでした。そして陰毛をどのように抜くのか―そして我々の素敵なニックのヘアに実際に手出しすることなく実現するか―ヘア＆メイクチームと話し合いましたよ。

とても興奮し、絶対にやりたいと思いました。
現代ではない時代におけるクィアな親密さは、往々にして秘密にされ、なかなか知る機会がいないように思えます。一方このドラマでは、人々があらゆる性的な親密さを全開にしています。スクリーン上ではなかなか稀有なことではないでしょうか。
セックスと親密さが登場人物たちにとって極めて重要な意味を持つ作品だからこそ、インティマシー・コーディネーターとしては大変やりがいのあるプロジェクトだと思いました。

素敵でした。本当に最高のチームです。
私の役割の性質上、作品全体を通して多くの人たちと仕事をすることになりますが、みんな優秀で、このプロジェクトを成功させようと情熱を注いでいました。

このプロジェクトにやりがいを感じたもう一つの理由は、クィア的な親密さの描き方です。どのようにクィアネスに取り組むかについて、幅広いアプローチがある作品に関わることができたことが光栄でした。
テレビや映画では歴史的に、クィアなセックスの様々なジェンダー表現について、見せ方を制限する傾向があると思います。『メアリー＆ジョージ』ではクィア、特に男性のセックスが多様な形で表現されています。
（了）

メアリー＆ジョージ　王の暗殺者
​ドラマ公式ページ：https://www.star-ch.jp/drama/maryandgeorge/1/

▼放送
＜字幕版＞毎週火曜よる11:00 ほか
＜吹替版＞毎週木曜よる11:00 ほか

▼配信
＜字幕・吹替版＞全話独占配信中！
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0D9D52MV7/

＜ストーリー＞
17世紀、エリザベス1世から王位を継承したジェームズ1世が統治するジャコビアン時代イングランド。地主階級ながら野心的なメアリー・ヴィリアーズは、暴力的な夫や質素な暮らしに嫌気がさし、容姿端麗の次男ジョージをフランスに送って、裕福な女性と結婚する社交術を習得させようとする。しかし国王ジェームズ1世が若い男性に目がないことを知ると、息子を国王の愛人にし、権力と富を手に入れるという大胆な計画を企てる。フランスから帰国したジョージは、母の導きのもとに数々のライバルを蹴落とし、ジェームズ1世の寵愛と信頼を得て、「バッキンガム公爵」として王政を司る枢密院メンバーにまで上り詰める。一方、自らも上流貴族と再婚したメアリーは、陰謀や策略を張り巡らし、ジョージと共に富と権力と称号を手に入れる。ヴィリアーズ家は宮廷で最も影響力のある一家に成り上がっていくが、政治家のフランシス・ベーコンら政敵との権力争いや敵国スペインとの確執など、彼らの成功を阻む問題が浮上するなか、次第にメアリーとジョージが対立し…。

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『メアリー＆ジョージ　王の暗殺者』© Sky Studios Limited 2024