『ブォンジョルノ・パパ。』野村雅夫氏 解説|動画文字起こし
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。そんなエドアルド・レオに注目した特集「イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ」について、野村氏が解説する番組をYoutubeで配信中!本記事ではその解説番組を文字起こしでお届け。あわせてお楽しみください。
目次
特集:イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。みんな大好き明快でエモーショナルな伊娯楽作のこれが進行形!
解説番組
番組文字起こし
どうも、野村雅夫です。イタリア娯楽映画の進行形、エドアルド・レオ特集。今回ご紹介するのはこちら!
こちらはエドアルド・レオの”監督”作品です。共同脚本ではありますが脚本も自分で書いてまして、出演もがっつりしています。コメディ全開の作品なんで、俳優としてはレオ本領発揮!という感じですかね。ちょっと情けない、振り回され系のキャラクターが実に楽しいです。
イケメンのアンドレアとレオ演じるボンクラ、パウロ。2人の男が仲良く楽しく暮らしているところへ、アンドレアの娘だと主張する女子高生とそのおじいちゃんが転がり込んでくるんですね。そうやってトラブル満載の日々が始まります。
特に割を食うのはやっぱりレオですね。例えばトイレに籠っているところに平気で隣でシャワーを浴びられたり、夢遊病によるシュールな寝言に苦しめられたり、めちゃくちゃ笑えます。ただこうした一見お笑い重視のコント的なシーンの積み重ねに、実は意味がありまして、それがね、後半に繋がっていくっていうのが、巧いんですねえ。
しかも全体を見渡してみると、人生や価値観を問いなおす物語になっている。これはですね、レオの他の作品にも実は共通して言えることだったりします。本作だと例えば思春期の女の子と父親の確執、三十代の仕事や人生の悩み、リタイア後の夫婦の危機など、物語の中でそれぞれの世代の登場人物がなんらかの問い直しをしていくんですね。
まあ、そうですね。例えば「なにを高望みしてたんだろう」とか、「人生時には失敗してもいいんじゃないか」ってことに気づいていくんですね。なので、観客の誰もがきっと誰かに感情移入できるようにしてある。これが大きな特徴だと思います。
この映画、起承転結でいうところの“転”の畳みかけがすごいです。ダメ男二人をこれでもかと不幸が襲います。ただ、これ原因がちゃんとあるんですね。例えばイケメンのアンドレア。こいつはもうねえ、口先三寸で生き抜いてきた男でして、娘が現れても全然向き合いません。で、ボンクラのパウロですけれども、こいつはねえ、それ叶うのかていう夢をずっと追いかけていて、家賃も払わずアンドレアの元に居候しているような始末ですよ。だからトラブルの種ってのはすでに撒かれているんです。そこに娘たちがやってきて、水をやることで芽吹くんですね。それがやがて見事に咲き誇るんですよ。花になるわけです。でも考えてみたら花ってのは種子を付けますね。で、また新しく生まれ変わっていきますよね。そういうことを予感させるのがなかなか憎いんです。
うまい設定だなあと思ったのは、レイラが学校で陸上のリレーのバトンパスの練習をしているんですけど、これがなかなかうまくいかないんです。バトンパスってこうポーンとバトンを渡したらそれでおしまいじゃなくって、しばらく並走する必要がありますよね。これが誰かと一緒に住んだり、子育てをしたりっていう世代のバトンパスのメタファーになっている。親から子へ、そのまた子へといった具合に。アンドレアはこれをずっと無視して生き続けてきました。だから、誰かと一緒に住んだりする、人生並走も必要だっていうメッセージになってるんですね。
またレオとおじいちゃんを演じているジャッリーニという俳優のこのコンビ、実は『わしら中年犯罪団』とその続編である『帰ってきた中年犯罪団』でも見られますんで、是非ねえ、その味わいの違いっていうのも楽しんでいただきたいところです。
この作品、そして僕が代表を務める会社、京都ドーナッツクラブが選んだほかの作品も含めて是非スターチャンネルでご覧ください!
作品の視聴方法
『ブォンジョルノ、パパ。』
監督:エドアルド・レオ
出演:ラウル・ボーヴァ, マルコ・ジャッリーニ, エドアルド・レオ
(c) 2013 IIF
そのほかのラインナップ
ラジオDJ、翻訳家。大阪のFM802での様々な番組を経て、現在は姉妹局FM COCOLOのモーニングショーCIAO 765を担当。株式会社京都ドーナッツクラブの代表も務め、映画の字幕制作、コラム執筆や書籍の翻訳も手掛ける。
https://twitter.com/pondemasao