『わしら中年犯罪団』野村雅夫氏 解説|動画文字起こし
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。そんなエドアルド・レオに注目した特集「イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ」について、野村氏が解説する番組をYoutubeで配信中!本記事ではその解説番組を文字起こしでお届け。あわせてお楽しみください。
目次
特集:イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。みんな大好き明快でエモーショナルな伊娯楽作のこれが進行形!
解説番組
番組文字起こし
どうも、野村雅夫です。イタリア娯楽映画の進行形、エドアルド・レオ特集。今回ご紹介するのはこちら!
『わしら中年犯罪団』。面白おかしい邦題を付けてしまいましたが、原題は「Non Ci Resta Che Il Crimine」、「もう犯罪っきゃない!」っていう意味です。物語は中年男三人が、それぞれの理由で人生に行き詰まっているところから始まります。「なんかいい金儲けの方法ないかなー」と考えているところで、かつて実在した「マリアーナ団」という極悪非道の犯罪組織の聖地巡礼ツアー企画というのを思いつくんですね。で、早速実行に移します。すると、警察に怒られたり、駐禁取られたりと、まあ先が思いやられます。
そこへ今は金持ちになっている幼馴染のジャン・フランコという男が登場。こいつ昔からいけすかねえなあと思っていたらですよ、大変なことが起こるんです。2018年つまりこの映画が撮られた現代から、1982年へとタイムリープしてしまいます。「え、これって『バック・トゥ・ザ・フューチャー』じゃないか」と思っていたら、堂々と台詞で言ってます。「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ!」って。
えーこれを言うのがジャン・フランコなんですけど、演じているのはマッシミリアーノ・ブルーノ。実は本作の監督でして、メインの脚本家です。自分で言っちゃうんだって感じですね。
さて過去に行ってしまった三人は「マリアーナ団」の巣にうっかり入ってしまい、大騒動が始まります。その「マリアーナ団」のボスを演じているのが、我らがエドアルド・レオです。強面で肉体派、かつ非道な男というキャラクターは『黄金の一味』の元ボクサー役にも通じますが、ドスの利いたキャラのまま、いつの間にかコミカルにも見えてくるという難しい役どころを見事に演じています。
この映画が成功している理由は脚本の骨格がしっかりしているということ。ストーリーラインを含めて王道であり、笑いも結構ベタなところもあるんですけども、そのベタをちゃんと乗り越えてゆく要素を用意しているのが素晴らしいところ。これはイタリアのコメディの特徴でもありますが、とにかく、どいつもこいつもしゃべりまくる!タイムリープした中年男三人にレオも加えて、四人のアンサンブルがとにかく、まー楽しいです。
また、作中でよく使われるのが画面分割。スプリットスクリーンです。これは犯罪もの、サスペンス、いわゆるジャンル映画でかつてよく使われた手法です。80年代感をセットや衣装、あるいは史実としてのワールドカップや「マリーナ団」といったような要素に加えて、映像面でもこういった手法を使うことで時代感を演出しているんですね。
また、本作のヒロイン、サブリナを演じたイレニア・パストレッリ。彼女は『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』で2016年イタリアアカデミー賞最優秀女優賞を獲得しています。サブリナ、初めて出てきたときは、そこまで大切なキャラクターだと思ってなかったんですけども、いつの間にか、峰不二子ばりに超重要なキャラクターになっていきます。そしてこの作品続編がありまして、そちらでも意外な形で登場することになります。
また「2」(『帰ってきたわしら中年犯罪団』)では「1」のとあるシーンが違う視点で語り直されたりするんです。「1」だけでも十分に面白いんですけれども、続けてみると面白さは数倍UP!これは保証しておきます。
この作品、そして僕が代表を務める会社、京都ドーナッツクラブが選んだほかの作品も含めて是非スターチャンネルでご覧ください!
作品の視聴方法
『わしら中年犯罪団』
監督:マッシミリアーノ・ブルーノ
出演:アレッサンドロ・ガスマン、マルコ・ジャッリーニ、 ジャンマルコ・トニャッツィ、エドアルド・レオ
(c)2019 IIF and RAI CINEMA
そのほかのラインナップ
ラジオDJ、翻訳家。大阪のFM802での様々な番組を経て、現在は姉妹局FM COCOLOのモーニングショーCIAO 765を担当。株式会社京都ドーナッツクラブの代表も務め、映画の字幕制作、コラム執筆や書籍の翻訳も手掛ける。
https://twitter.com/pondemasao