『黄金の一味』野村雅夫氏 解説｜動画文字起こし
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。そんなエドアルド・レオに注目した特集「イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ」について、野村氏が解説する番組をYoutubeで配信中！本記事ではその解説番組を文字起こしでお届け。あわせてお楽しみください。
目次
特集：イタリア娯楽映画の進行形 エドアルド・レオ
イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、エドアルド・レオ。みんな大好き明快でエモーショナルな伊娯楽作のこれが進行形！
解説番組
番組文字起こし
どうも、野村雅夫です。イタリア娯楽映画の進行形、エドアルド・レオ特集。今回ご紹介するのはこちら！
『黄金の一味』。こちらは他のコメディ三作品とは随分毛色が違います。レオ演じるキャラクターは元ボクサー。バーを経営していて、闇金業者から金を借りざるを得ないというなかなかシリアスな役どころ。ヴィジュアルは肉体派で、例えば『ブォンジョルノ、パパ。』という作品で見せるボンクラっぷりとは随分違います。レオの役者としての幅の広さが伺えますね。
原題は「Gli Uomini D'oro」。まずこの言葉の意味が、映画の冒頭で示されます。犠牲者を出さずに、綿密に計画を立てた上で、大金を盗み出す窃盗団を示す専門用語なんですね。人によっては1965年の映画「Sette Uomini D'oro」、『黄金の七人』を思い出す方もいるかもですね。あれもやっぱり悪党たちが徒党を組んで大金を盗み出す話でした。あの「ルパン三世」にもこの映画を元にしたエピソードがあるなんて言われていますが、ともあれ、こちら『黄金の一味』。実は1996年に、トリノで起きた事件を元にしているんです。40億リラ、日本円にして約4億円が実際に盗まれたという、そんな事件が割と最近あったというのも驚きなんですが、この映画、ストーリーテリングと構成が非常に巧みです。
映画は全体で三章構成になっていまして、一つの事件が三人の主人公の視点で語り直されます。まず第一章、トリノの郵便局に勤める男が自分の運転する現金輸送車から金を盗み出すという計画を思いつきます。盗んだ金は共犯者のザーゴと山分け。見事盗めたらコスタリカへ逃亡するという計画が示されるんですね。それと並行して、犯罪のトリックであるとか人間関係であるとか、かなりテンポのいい編集で、たった30分くらいで事件のあらましが示されます。
さあ、そこで第二章。主人公はザーゴに切り替わりまして、時間も巻き戻って再スタートなんですが、ただ事件をそのままなぞっていくかっていうと決してそういうことではありません。例えばザーゴと妻との関係や、第三章の主人公になるレオ演じるウルフとバーを共同経営していることなど、ここで初めて明らかになるストーリーもでてきます。
そうやって話がいつの間にかツイストしていきまして、それまで端役と思っていた人たちとの意外な繋がりも明らかになっていくんですね。脚本レベルでもいろいろとシャッフルしてパズルが組んであるうえに、映像面でもいろんなトリックを使って編集してありますんで、全部見終わると結構カタルシスを覚えると思いますよ。
監督は若手のヴィンチェンツォ・アルフィエーリ。この人自分で編集も手掛けてるんですけど、なかなかこれが巧いんですよ。例えば第三章の冒頭、暗闇の中を夜の道を車が一台走っている。それを上から撮影しているんですね。すると暗闇の中ライトがパーっと移動していくように見せかけて、それがいつの間にか、レオ演じるキャラクターの彼女の黒髪に移り変わってゆく。で、女性の顔がバーンと画面に出てくる。こういう細部まで是非味わってみてほしいですね。
この作品、そして僕が代表を務める会社、京都ドーナッツクラブが選んだほかの作品も含めて是非スターチャンネルでご覧ください！
作品の視聴方法
『黄金の一味』
監督：ヴィンチェンツォ・アルフィエーリ
出演：ファビオ・デ・ルイージ, エドアルド・レオ, ジャンパオロ・モレッリ
そのほかのラインナップ
ラジオDJ、翻訳家。大阪のFM802での様々な番組を経て、現在は姉妹局FM COCOLOのモーニングショーCIAO 765を担当。株式会社京都ドーナッツクラブの代表も務め、映画の字幕制作、コラム執筆や書籍の翻訳も手掛ける。
https://twitter.com/pondemasao