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『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』ウィル・ポールターのインタビューが到着

インタビュー

2023.07.14

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ミステリーの女王、アガサ・クリスティー原作の『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』で主演のボビイ・ジョーンズ役を務めたウィル・ポールターのインタビューを公開。ぜひ本編とあわせてお楽しみください。

目次

ウィル・ポールター|プロフィール

1993年・イギリス生まれ。『リトル・ランボーズ』(2015)で映画デビュー後、『ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島』(2010)に出演。そして『メイズ・ランナー』(2014)でインパクトを残すと、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)では自らの命と良心の間で揺れ動くジム・ブリジャー役で高く評価される。その後、実在の事件を元に作られた『デトロトイト』(2017)では凶悪な差別主義者の白人警官役を演じ、実力派としての印象を決定的なものに。そして日本でも大ヒットを記録した『ミッドサマー』(2019)では主人公グループの無神経な若者の役を見事に体現。そしてついに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)に全身金色のアダム・ウォーロックという強烈なキャラクターとして登場し、MCUデビューも果たす。映画のほかに『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』(2018)、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』(2021)、そして『一流シェフのファミリーレストラン(原題:THE BEAR)』といったテレビシリーズでの活躍も目覚ましく、名実ともにイギリスを代表する若手俳優といえるだろう。

インタビュー全文

Q:ヒュー・ローリーの脚本を読んだ時の最初の印象を教えてください。

A:私のデスクに偶然この脚本が置かれていたのを見たときは、かなり興奮しました。なにしろアガサ・クリスティーの作品といえば世界的にも非常に有名ですからね。しかも今回はそこにヒュー・ローリーのオリジナルストーリーが脚色されるというのですから、とてつもなくエキサイティングな組み合わせだと思いました。そんな脚本を読めるなんて、とにかく本当に、本当に、心の底から自分はラッキーだと感じました。これまで読んできた中で最も娯楽性が高く、バランスのよい脚本のひとつでしたし、ボビイというキャラクターにもとても惚れこみました。彼を演じられる機会を手に入れることができて非常に光栄に思っています。
Q:ボビイ・ジョーンズというキャラクターについて教えてください。また、彼はどのような役回りなのでしょうか?

A:ボビイは英国海軍に6年間従事した後、最近になって生まれ育ったマーチボルトの街へ帰ってきたのです。そして彼の父親の言葉を借りれば、人生の岐路に立っているところです。彼はいわゆる「器用貧乏」で、ゴルフのキャディーとして働いているものの、屋根の修理をしたり、どうにも中途半端な仕事ばかりを請け負ってしまうのです。そんなある時、海軍時代の船員仲間で親友のノッカー・ビードンと共に中古車販売店を経営する計画を思い出すのです。

彼はあれこれと何でも屋のようなことをしていますが、キャディーの仕事も含めて実のところはどれも本当にやりたいと思えるものではないのです。自分の人生の目標に迷いを感じているところに、謎の男の殺人事件が起き、それと同時にルーシー・ボイントン演じるフランキーと久しぶりに再会したことで、迷っている場合ではなくなってしまう。この事件に心から興奮しているし、真相を突き止めることが彼の生きる目標になっていくのだと思いました。
Q:ボビイとフランキーはどのようにして一緒に事件にかかわっていくのでしょう?

A:ボビイがキャディーとして働いているゴルフ場にフランキーが現れるのです。彼女はゴルフをプレイしに来たといいつつ、実際にはそれが目的でなさそうだとボビイは気づきます。彼女は死亡した謎の男の背景に何があるのかを突き止めたくてゴルフ場を訪れていたのです。ゴルフ場での再会は、ふたりの関係と事件の謎を追求する勢いに拍車をかけることになりました。

ボビイはフランシス・ダーウェントがレディの称号を持っていることを忘れたかのように彼女を子供の頃からの呼び名で「フランキー」と呼びますし、フランシスもそれに応えます。これは、自分の身分に関係なく、周りの人と分け隔てなく接することのできるフランキーの素敵な一面を表した瞬間でした。さらに彼女のユーモアのセンスや生き生きとした性格も印象付けるシーンです。フランキー演じたルーシーの演技の素晴らしかったですし、私も楽しく演じることができました。
Q:シリーズを通じて、フランキーとの関係はどうなっていくのでしょうか?

A:あるシーンでフランキーが「私はズボンを履いているのよ、ジョーンズのね」と言うのですが、あれは比喩ではなく本当にフランキーはボビイのズボンを履いているのです。これはボビイとフランキーがお互いを対等に感じられるようになった素晴らしい瞬間だと思いました。それまでボビイにとって「ボビイ&フランキー」というペアは夢物語のようなものでした。牧師の息子である自分とフランキーでは社会的地位が違い過ぎて仲間になれるとは思ってもいなかったのです。

同じようにフランキーもあの性格上、社会経済的な制約から脱却しようと、色々なことをしていたのでしょう。そして大人になったふたりが共に冒険と発見の旅をするというのは、子供の頃にふたりで遊んだ頃の楽しさを映し出しているのだと思います。このシリーズを通じてある意味ではふたりが幼いころの絆を再確認したり、それ以外にも、ふたりの成長、いちかばちかのシナリオ、時に大きな危険のある素人の探偵の真似事などをするふたりの姿が描かれていきます。まるでどろぼうごっこをしているように意見が食い違う愉快なコンビなんです。
Q:視聴者はボビイとフランキーの関係のどのような部分を楽しむと思いますか?

A:間違いなく視聴者はボビイのこともフランキーのことも、ふたりが一緒にいる姿にも夢中になるでしょうね。ストーリーの序盤、ふたりがいずれ一緒になるだろう、という予感を漂わせます。最初の頃のボビイはフランキーの前では自分の一番かっこいい所を見せようとしていたと思います。

その後、フランキーのそばにいることで次第に覚醒していくボビイの姿を見て嬉しくなりました。彼女に背中を押されることで、次第に勇気を持ち、彼女の影響で成長していき、そしてストーリーの中盤で再会する下りはボビイを演じるうえで最も楽しんだ部分のひとつです。視聴者の皆さんにも楽しんでいただきたいですね。
Q:ふたりの相性が抜群であるは画面越しにも伝わってきましたが、ルーシーと共に何もないところからどのようにその関係性(ケミストリー)を構築していったのですか?

A:ボビイとフランキーの関係はこのストーリーで最も重要なもので、通常は制作の最初にいわゆる「相性を合わせる読み合わせ(ケミストリー・リーディング)」をするものなのですが、ちょうどコロナ禍だったこともあり、ルーシーとの最初の打ち合わせはZoomで行いました。そんなことが続いた後、ルーシーの現場初日には、ボビイとルーシーが数年ぶりに再会するシーンの撮影だったのです。ずっとZoom越しに色々な話をしていた私たちがようやくお互いに本当に出会えたことが、子供の頃から知り合いのふたりが久しぶりに再会するシーンのリアルさを演出したと思います。演技と実際の自分たちがリンクしたいいシーンになりました。
Q:久しぶりの再会から、やがてふたりは一緒に事件を推理するためのロードトリップを開始しますが、撮影はいかがでしたか?

A:結果としてストーリーの展開がイギリスとウェールズに点在していたことが非常に幸運でした。私たち自身も今までに見たことのないような最も美しい場所を何カ所も訪れることができました。スウォンジーやガワーペニンシュラで長い時間を過ごしましたが、こんな素晴らしい場所が自分の家の近くにあることを恥ずかしながら全く知りませんでした。イギリスの美しい田園地方を色々と訪れることができたのも嬉しかったですね。特にロックダウン後だったので、まるでご褒美のように感じましたし、そこで撮影をすることできたことが心から嬉しかったです。

確か私の撮影初日はサリーにあるアングラーズアームという粋なパブで、数シーンを撮影しました。ボビイはそこに滞在するのですが、そのパブのオーナーを演じるのがポール・ホワイトハウスだったのです。大のコメディファンとして、ヒュー・ローリーの演出のもとで演技ができるだけでも幸せなのに、さらにポール・ホワイトハウスと共演までできたのですよ!完全に私の夢が叶いましたね。

ポールは本当に面白いうえに、役者としての才能も豊かなので、感動的な演技も泣けるほど笑える演技もお手の物なのです。とてつもなく経験豊かでアドリブも自由自在です。レジェンドである彼と共演できたことは一生の宝物になりました。
Q:あなたのボビイに対して、フランキー役のルーシー・ボイントンとの共演はいかがでしたか?

A:ルーシーとの共演は最高でした。とても素晴らしい役者で、これ以上ないほどの才能に溢れた最高の共演者でした。目を見張る演技とキャラクターへの理解や分析も深く、大きな刺激を受けました。演技に行き詰まってどうすれば良いのかわからなくなった時なども彼女に救われました。ストーリー全体に対する彼女のヴィジョンのおかげで、自分の苦境を脱することもできましたし、常に的確な提案をしたり一歩先を見越している人が現場でパートナーとしてそばにいてくれることは、まるで特別なギフトのようでした。いつもフランキーがボビイの一歩先を行っていて、彼が必死で彼女のペースについていく様子は、まさに実際の私の姿を映しているようでした。私もいつもルーシーのペースについていこうと必死でしたから。彼女との共演シーンが多かったこと、また彼女のように才能ある役者と同じシーンを過ごせたことは幸運でした。
Q:ヒュー・ローリーの脚本はユーモア満載でしたね。ドラマの明るい、軽妙な面を演じるのも楽しめましたか?

A:私は用事がなくてもずっとセットにいるタイプですし、笑いも大好きです。このドラマではあまり多くはありませんがドラマもコメディも演じることができたことが嬉しかったですね。脚本のトーンもバランスも非常に良く、基本的には純粋なカタルシス、感動、大きな恐怖が存在し、そこに根本から恐ろしく悪意に満ちたキャラクターと友好的で温かいキャラクターが登場することになります。本当に見事なほどに均整の取れている作品で、そこに参加できたことは心から光栄でした。
とくにニック・アズベリーは世界一楽しい人物なのに、彼は山高帽を被って、こちらの目を見据えた途端に世界一恐ろしい人物に変わるのです。驚異的な演技力ですし、彼の演技にはクリスティが巧みに描写した不気味な雰囲気が色濃く漂っていました。アガサ・クリスティーは本当にバランスの良い物語を描き、読者を未知なる世界や危険からの脱出、真相にあと一歩へといざなう見事な手腕の作家です。一見するとこれだと思ったものが、よくよく調べてみると全く違う意味を持っていた、といった展開などは彼女の作品の醍醐味であり、唯一無二の魅力になっていると思います。
Q:監督としてのヒュー・ローリーとの仕事はいかがでしたか?

A:脚本は非常に素晴らしかったので手を入れる必要はほとんどありませんでしたが、たとえば何かを加えたかったり、小さな変更をしたいと感じたりする時、ヒューはとても協力的でオープンな監督でした。現時点の私のようなキャリアの過程にいる役者にとって、ヒューのように実績のある人物と話し合いができる事は素晴らしいチャンスなんです。脚本も手掛けている監督と話ができるというのは非常に価値のあるものでした。

ヒューが監督もして脚本も手掛けているという事実が、現場の誰とっても大きな利点であったことは間違いありませんでした。彼はキャラクターやストーリーのすべてに隅々まで精通していましたから。ですから、そのような人と話し合いができるというのは、より一層実りがありましたし、彼は知識の泉のような人でした。まさに理想の監督であり、私にとってはこのシリーズのすべてにおける基準でした。これ以上ないほどの好人物で、コメディを演じることも、楽しいことも大好きで、実際に楽しい時間を共有することができました。

憧れの人には会わないほうがいい(実物を見て失望するから)、という良く言いますが、彼に関してはそのアドバイスは完全に間違っていましたね。ヒューと共に、そしてヒューのために仕事ができる事は喜びでした。彼は信じられないほど特別な人物です。彼の頭脳は他の人とは全く違う。今まで聞いたことのないような面白いことや興味深いものを生み出してくれるのです。素晴らしい監督で、素晴らしい人物で、本当に本当に本当に彼からチャンスをもらえてラッキーでしたし、心から彼に感謝をしています。
Q:ボビイとフランキーのロマンス以外にも、このストーリーには、ノッカー・ビードンとボビイ・ジョーンズの「ブロマンス」も描かれていますが、演じていていかがでしたか?

A:(ノッカー役の)ジョナサン・ジュールズの才能と彼のコメディのセンスは驚異的だと思います。素晴らしい役者です。才能がありこれまで見てきたコメディを超えるものを見せてくれるのです。天性のセンスの持ち主で、常に面白いことを探し出しバラエティ豊かにやって見せてくれるのです。彼のアドリブはとても特別で、あまりに面白くてつい笑いが堪えられずに演じるのが難しいこともありました。彼との共演シーンは最高でしたね。

楽しく笑いながら演じられたことが良かったのです。というのも、ボビイとノッカーは親友だからです。このストーリーにはふたりの間の「もうひとつの友情というラブストーリー」もあるのです。ふたりの友情は英国海軍の軍艦に共に従軍した時から始まりました。

そして船員仲間となった後、一緒に中古車ビジネスを始めるためにマーチボルトへ戻ってきたのです。ボビイとノッカーは英国海軍で非常に親密になり洋上でお互いの将来の計画なども話し合ったのだと思います。彼らのいた時代、海軍を辞めるというのは、彼らとっては何かしらの権利を奪われたように感じるものだったのだと思います。さらに、そのままエリートコースに行くわけでもない。ですから彼らにとってはふたりで一緒に良い未来を手に入れるために働く、というのはとても励みと活気になることでした。

中古車販売店を経営するためにはノッカーがビジネスを回すためのブレイン兼修理工であり、ボビイは営業マンという役割です。ふたりで「ビードン・アンド・ジョーンズ」として起業しましたが、実のところは「ジョーンズ・アンド・ビードン」ですね。もしふたりの物語のスピンオフがあったとして、ジョナサンがやるというなら、私ももちろんやりますよ!
Q:衣装デザインも非常に洗練されていました。お気に入りの衣装はありましたか?

A:衣装はどれもすべて気に入りました。衣装デザイナーのローラ・K・スミスはレベルの違う才能の持ち主で、彼女の手がけた衣装は並外れて素晴らしいものばかりなのです。非常に協力的で、私も最初から衣装デザインプロセスの一員であると感じさせてくれました。最初の衣装合わせから、すてにどの衣装も気に入って、とても幸先の良いスタートを切ることができました。彼女の手がけた衣装はどれも見事でした。

このドラマの衣装の仕立てはどれも最高でした。1930年代のスーツ生地は最も優れているのですが、同時に30年代は「ウール時代」でもあったのです。1936年の夏はイギリスでも最も暑い夏のうちの1年だったそうなのですが、この撮影もそれに似たかなりの暑さの中で行われたのですよ!

そして私はほとんど毎日ウール生地の衣装を身に着けていました。ウールのズボンには同じ素材のシャツが合うということでウールのシャツを着て、その上にレザージャケットを羽織っていたので、もう全身を厚い生地で覆われた状態でずっと汗をかいていましたね。でもそのせいで体重が落ちてしまうこともあり、毎日2度、堂々とランチを食べることができました。撮影中のわたしのニックネームは「ウィル・2ランチ・ポールター」です(笑)。
Q:現在は、視聴者にとって観たい作品の選択肢も多いですが、この作品の見どころを教えていただけますか?

A:このストーリーの他にはない魅力のひとつは、今どきの探偵スリルアクションタイプの物語の要素もありつつ、そこに現代のようなテクノロジーがないという豊かさにあると思っています。もし2021年を舞台にしていたら、グーグルで調べればものの10分で解決してしまいますが、このドラマではふたりが原料や知恵を絞って捜査を進めていく醍醐味があるのです。

『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』はかなり楽しんで観て頂ける作品になっています。このドラマは、新たな技術に対して、昔ながらの技術を駆使しながら人智を尽くして謎を解決していく刑事たちの姿に共感し、心躍らせた私の大好きな名作映画の数々を彷彿とさせます。

一言でいえばヒュー・ローリーのたぐいまれな才能で素晴らしいアガサ・クリスティーの名作を映像化したのがこのドラマです。どうか『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』を観てくださいとお願いしたいです。ドラマ、哀愁、スリル、サスペンス、そして心温まる愉しさもあります。声を出して笑ってしまうような可笑しさや興奮もある。いろんな面白さが詰まっている特別なドラマです。そして出演できたことが本当に幸運だと感じています。
Q:アガサ・クリスティーの映像作品への出演は、トップ俳優と呼ばれる方々の登竜門ですね。今回はあなたにとっても待望のアガサ・クリスティー作品への出演でしたか?

A:間違いなく、今回アガサ・クリスティーの映像作品に出演できたことはとても光栄で、役者として、とりわけイギリス人俳優としての「やっておきたいリスト(バケットリスト)」に入っているものでした。彼女の名作のひとつに登場するキャラクターを演じることができて非常に光栄でしたし、いかに彼女の作品が世界的にも有名で、人々の心を打つものであるのかを知ることもできました。そしてこうしたスタイルの作品を完成することができ、素晴らしい人々と一緒に作り上げることができたことを誇りに感じています。

視聴方法

Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX」にて配信中
視聴はこちらから>>
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8SVQ5V1
『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』
原題:WHY DIDN'T THEY ASK EVANS?
ドラマ公式サイト:https://www.star-ch.jp/drama/evans/sid=1/p=t/
視聴ページ(Amazon Prime Video チャンネル):https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8SVQ5V1
© Agatha Christie Productions Limited MMXXI
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