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『こどもたち』野村雅夫氏 解説|動画文字起こし

解説記事

2024.05.24

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イタリア映画に精通するラジオDJ・翻訳家の野村雅夫氏と、氏が代表を務める伊の文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」がいま推している伊映画の新たな才能、パオラ・コルテッレージ。そんなパオラ・コルテッレージに注目した「特集:ゴー!ゴー!パオラ!~イタリア娯楽映画の進行形~」について、野村氏が解説する番組をYoutubeで配信中!本記事では『こどもたち』の解説番組を文字起こしでお届け。あわせてお楽しみください。

目次

『こどもたち』野村雅夫氏 解説

子育てあるあるを、①育児ストレス限界突破の心理描写を「窓から××××××する」と描く、②赤ん坊のギャン泣きの声に代わってあの最も有名なクラシック作曲家の名曲を流す、などのブっ飛び演出で描く育児ストレスコメディ『こどもたち』の解説動画をお届け。
【野村雅夫 プロフィール】
ラジオDJ、翻訳家。大阪のFM802での様々な番組を経て、現在は姉妹局FM COCOLOのモーニングショーCIAO 765を担当。イタリアの知られざる文化を日本に紹介する株式会社京都ドーナッツクラブの代表も務め、映画の字幕制作、コラム執筆や書籍の翻訳も手掛ける。

解説番組

映画『こどもたち』を野村雅夫が解説 | スターチャンネル24年4月放送&配信「特集:ゴー!ゴー!パオラ!〜イタリア娯楽映画の進行形〜」

via YouTube

番組文字起こし

どうも、野村雅夫です。現代イタリア映画きってのコメディエンヌ、パオラ・コルテッレージ主演作を5本お届けする特集「ゴー!ゴー!パオラ!イタリア娯楽映画の進行形」。今回紹介する作品はこちら!
『こどもたち』© 2020 WILDSIDE S.R.L. - VISION DISTRIBUTION S.P.A.
これは現代イタリア人カップルの生きづらさをテーマに据えた映画です。端的に言うと、子育てのあるあるの話なんですね。とりわけ2人目を授かった夫婦が直面する様々な問題を、我らがパオラ演じるサラとヴァレリオ・マスタンドレア演じる夫のニコラという座組で描きます。子育てあるあるのコメディというだけでも面白いんですが、演出がなかなかぶっ飛んでましたね。

ポイントを3つあげましょう。まずはね、「飛び降り」です。文字通りの飛び降りです。窓から飛ぶんです!最初出てきたときは面食らいましたよ。え、そんな勢いで窓からダイブしたらもう命ないだろう??ところが、次のシーンで普通に蘇ってくるんですよね。で、気づくわけですよ。

なるほどな。これも逃避の表現なんだと。もうこんなのやってられません!窓から飛び降りたいわ!っていうのを、文字通り、いや映像通りそのまま見せてしまうんですね、フラストレーションが溜まったとき、堪忍袋の緒が切れそうだというときに、繰り返しどんどん飛び降りていきます。

これはなかなか今までなかった表現だと思いますよね。しかもその飛び方もですね、頭からいってみたりとか、二人で一緒にいったりとか、飛びそうで飛ばないとか、いちいちバリエーションをつけてくるので、見ていて飽きないんですよ。

ぶっ飛んだ演出2つ目。赤ちゃんの泣き声の代わりにベートーベンの「悲愴」を鳴り響かせること!まあ、赤ちゃんが泣くというのはまだ言葉ができないわけですから、例えばおむつを替えてくれとか、お腹すいたー暑い寒いというメッセージを発しているんだと思うんですけども、大人はわからないわけですよね。

だから、そのメッセージの受け取りに失敗して、赤ちゃんは満たされないから、またさらに大きな声で泣くという悪循環に陥ってしまう。これ子育てあるあるの一つだと思うんですけど、その中で大人は赤ちゃんの泣き声が聞こえたらもう、それが恐怖になる。そこでベートーベンの「悲愴」です。突飛な演出ですけど、僕はなかなかリアリティのある置き換えだと思うんですよね。

ぶっ飛んだ演出3つ目!章立てされたオムニバス風の作りになっていること。子育て中の両親との関係とか、ベビーシッターについてとか8つのトピックに分けて、もちろん物語をわかりやすく整理するっていう効果もあるんですけれども、驚くのは、独自だなと思うのは、章の切り替えごとに何か真っ白な抽象化された空間でサイレント映画風のシーンが挟まることなんですよ。
こうした子育ての苦労は、何も主人公たち二人特有の問題ではないということを説得力を持って描けていると思います。おさらいすると、①飛び降り②ベートーベン③章の切り替え方法、この3つのぶっ飛んだ演出が、この映画をオリジナリティの非常に高いものにしていると言えますね。

日本とイタリアって先進国屈指の出生率の低さと晩婚化という同じ悩みを抱えています。2022年のデータを出しますと、合計特殊出生率日本は1.26、イタリア1.24。共に先進国最低レベル。相当に深刻な社会問題です。パオラはこの作品では脚本には参加していないのですが、出演作を選ぶ上で作品のメッセージ性は大事にしているはずです。

悲喜劇=トラジコメディの形をとった大衆娯楽作。これで広く問題を共有しながら、現状をどうにかしていきたい。何とかしたいという願いが込められているんでしょうね。
この作品、そして僕たち京都ドーナッツクラブが選んだ他の作品も、ぜひスターチャンネルでご覧ください。

その他のラインナップ

作品の視聴方法

19 件

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